【はまっ子防災プロジェクト】横浜市旭中学校で行われた地域防災訓練を現地リポート!

【アニメ製作】制作裏を公開!

はまっこ防災プロジェクトのアニメーションの内容は、「地震」「風水害」「避難」にパートが分かれています。

前回は「地震」「風水害」について、東京消防庁・本所都民防災教育センターの本所防災館に制作チームが取材しました。

今回は「避難」について、2021年11月に横浜市立旭中学校で行われた地域防災訓練の様子をお伝えします。

【目次】
訓練の概要
<各班の訓練の様子>
A班:仮設トイレ組立、ホース配管、プール揚水
B班:照明・発電機取り付け
C班:救護活動、炊事・給湯活動
まとめ:訓練の目的や特徴

 

訓練の概要


今回、地域防災訓練が行われたのは横浜市内にある旭中学校。同じ日に、徒歩約7分にある横浜市立中沢小学校と合同で訓練が行われました。他校の防災訓練と異なるのは、地域・小中学校が協働して行われた点です。

旭中学校と中沢小学校はそれぞれが防災拠点であるため、その防災拠点の周辺に住む地元の子どもたちと住民(ボランティア)が参加して、地域性を重視した防災訓練を一緒に行います。自分が実際に被災した時に関わる人や、避難する場所が同じであるため、小中学生は実際の被災時に近いシチュエーションが体験できます。

それぞれの学校から中学一年生62名、小学六年生73名が参加しました。小学生にとっては初めての、中学生にとっては2回目の防災訓練です。中学生は2回目ということで、リーダーシップを発揮できるようにある程度の役割があります。

子どもたちが取り組みやすいように「発災型訓練」という形をとり、子どもたちが自分たちの手で、防災グッズやホースを組み立てなどの作業を行います。

(※今年度はコロナ禍を考慮し、密にならぬように参加する地域住民の人数を限定しています)

開会式の様子:体育館前に集合する生徒たち

まずは、開会式を行うために、全員が体育館前のグランドに集合。

本日の流れの説明を受けた後に、班別に分かれて、実際に災害が発生した時を想定した動きをロールプレイングします。

所属している自治体のブロックごとに「A・B・C・本部・広報」のグループに分かれて活動を開始しました。

被災時に確保する必要があるものは、電気・食料・トイレですそして、それだけでなく、要救護者を助けるための救護活動も必要です。避難時に、どのようにして動けばいいのか、「A・B・C」グループの活動内容に注目して、具体的な活動の様子を見ていきます。

 

A班:仮設トイレ組立、ホース配管、プール揚水


プールの水は、被災時には貴重な生活用水として有効に活用ができます。

汲上ポンプと発電機で、プールの水をホースで汲み上げ仮設用トイレと体育館に送水します。

仮設トイレの使用方法がかかれた説明イラスト

プールから伸ばされたホースは、注水用マンホールに注がれ、下水道管に水を貯めます。

旭中学校では、仮設トイレは最大で4基、車いす用仮設トイレは1基が設営できます。

 

B班:照明・発電機取り付け


次に、B班の動きを見ていきます。

被災時に停電してしまうことに備えて、どのようにして照明を確保するのでしょうか。

まずは、スズラン照明、発電機、ロープなどの必要な資機材を防災備蓄倉庫から体育館へ運搬します。

 

スズラン照明を吊り下げるために、体育館2階の観覧席に上り、スズランケーブルをしっかりと取り付けます。

発電機とスズラン照明を電源中継ケーブルでつなげ、無事にスズラン照明を点灯させることに成功しました。

B班は、照明の確保だけでなく、非常食の食料の運搬も担当しました。

 

C班:救護活動、炊事・給湯活動


C班の活動は、機材・食料運搬、ランタン・簡易テント、炊飯練習、毛布担架救出訓練が行われました。

ここでは、応急担架などの「救護活動」と、大勢の人数の食料を確保する「炊事・給湯活動」にスポットを当てて見ていきます。

「救護活動」では、毛布と太い棒2本を使い毛布担架をつくります。

地震などの災害時にけが人などが周りに出た時は、身の回りにあるものを使って応急担架を作って安全な場所に運ぶ必要があります。

毛布担架もこのような応急担架としての役割を果たします。

作り方は以下の通りです。

①毛布を横向きにし、左から3分の1のところに竹竿を置いて折り返します。

②折り返した辺の端に十分な余裕をとり、竹竿をもう1本置いて、右側も折り返します。

③最後に、右側から折り返した毛布を左の竹竿にかけて折り返せば完成です。

 

もし竹竿等の棒がない場合は、毛布の両端をしっかり内側に巻いて上からつかんで運びましょう

(引用:三井住友海上『毛布や衣服で、応急担架を作ろう。』

生徒たちも無事に、毛布担架で人を持ち上げることができました。

ちなみに、毛布がない時は衣服でも代用が効きます。

 

「炊事・給湯活動」は、校舎裏手の避難所炊事場で行われました。

まずは、防災備蓄倉庫から炊事機材をリヤカーに積んで運びます。炊事場にはガスボンベ室があります。

ガス栓とかまどをホースでつなぎ、点火。その後、大鍋をかまどの上に乗せて、水を張って食材を投入します。

最後は、アツアツのゆで卵をすくい上げて、参加者全員に配布し、持ち帰ってもらいました。

例年はおにぎりを作りますが、今回はコロナ禍のためゆで卵に変更になりました。

ちなみに、備蓄できるお米の量は20kg のお米の袋が二つで合計40kgのお米を備蓄しており、400人以上のおにぎりを作ることができます。

被災時に、炊き出し用の大鍋で温かい料理があると、精神的にも安心感を得ることができます。

 

まとめ:訓練の目的や特徴


被災した際の「避難・防災活動」では、自助だけでなく「共助の精神」も大切です。

「地域との共助の精神を強める」ために、このような訓練での交流を通じて、高齢化が進んだ地域と子どもたちとの連携を深めることが重要になります。さらに、昨今頻発する集中豪雨や大型台風といった各地の気象災害に対する「防災教育」の必要性にも対応しています。

2017年、横浜市の同じ学区にある旭中学校と近くにある中沢小学校は併設型小中学校(※)になりました。これを機に同一日に地域防災訓練を実施することで、それぞれの防災拠点の周辺に住む小中学生と地域の方が直接触れ合う機会をつくることができました。

もともと、地域の方には「高齢化した地域を支える担い手として、子どもたちの街への関心を高めたい」という想いがあり、学校には「地域の方との触れ合いを通じて、子どもたちを育てたい」という考えがありました。

こうした二つのニーズを満たす絶好の機会として充足した活動の象徴ともいえます。

今回のような地域主催型防災訓練は、小中一貫教育ブロックの地域特性や児童生徒の実態に即して行われているのが特徴です。そのため、「共助の精神」を子どもたちにより広める良い取り組みだったといえます。

地域の防災運営委員方の力や熱意を、小中学生が感じて一生懸命参加している姿が印象的でした。旭中学校と中沢小学校が独自に策定した教科「地域・防災科」のグランドデザインでは、「自ら考え、自ら考え、共に認め合い、協働して課題解決に進める子ども」を目指しています。

今回の訓練を通じて、子どもたちもその姿に近づき、きっとたくましく育っていくことでしょう。

(※)正式名称「中学校併設型小学校及び小学校併設型中学校」

 

キャラクター事業:野村隆仁

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