シンエイ動画 原作・制作のアニメ『iiiあいすくりん』に学ぶ。多彩なキャラクター展開や子ども心を掴む令和的アプローチ

アイスクリン集合写真
サクセスに学ぶ

「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」といった国民的アニメの制作を手掛けてきたシンエイ動画株式会社(以下、シンエイ動画)。

2021年9月に45周年を迎えたことをうけ、今回は【シンエイ動画45周年特集】の第1弾として『iiiあいすくりん(あいあいあい あいすくりん)』をご紹介します!

『iiiあいすくりん』は2021年4月から6月までの間、テレビ東京系列の子供向けバラエティ番組「きんだーてれび」にて放送されました。

キャラクター活用やアニメ制作の裏側について、企画営業本部 プロデューサー 林郁美(以下、林さん)、商品化ライセンス マネージャー本宮さんにお話を伺いました。

取材当時の雰囲気は、ほんわかしたアニメの世界観をまるで反映したかのように、楽しく和やか。子どもが楽しめるように作られた製作当時の雰囲気が伺い知れました。

<目次>(※クリックするとその段落へ移動します)
iiiあいすくりんとは?
自分の子どもに見せたいと思えるアニメを
3D技術を駆使した緻密な表現
親子で楽しめるコンテンツを発信
人気商品は「アイス屋さんごっこ」
現在の子どもたちに通じる等身大の主人公に
今後の展開【10月から再放送中】
【友達の輪バトン】次は「PUI PUIモルカー」

 

iiiあいすくりんとは?


『iiiあいすくりん』は、アイスクリームタウンを舞台にバラエティーに富んだ15匹ほどのあいすくりん達が織りなす日常を描いた子ども向けアニメ作品です。

沖縄を中心に「ブルーシールアイスクリーム」を展開するフォーモスト ブルーシール株式会社が企画協力をしています。「ブルーシールアイスクリーム」で実際に販売されているフレーバーが、アニメのキャラクターの顔になっているのがこのアニメの特徴の一つです。

口癖は、「みんなでいっしょに、ハバ アイスデー」や「アイストゥーミーチュー」など、「nice」を「ice」になぞらえたアイスならではの決まり文句があります。

アイスクリン集合写真

©シンエイ動画/あいすくりんs

タイトル名がとってもかわいらしいですが、『iiiあいすくりん』の「アイス」の後につけた「くりん」という言葉の響きが、まるで架空のかわいい生物を彷彿させるというのも決め手の一つでした。

さらに、もっと印象に残るようなタイトルにしようと考え、「あいすくりん」の前後に言葉を付け加えることになりました。

「みんなでアイデアを出し合った中で、『あいあいあい』が候補に挙がりました。かわいいだけでなく、同じ言葉を繰り返し発声するとテンポ感もいいので、覚えてもらいやすいんじゃないかなと考えました。『あい』をアルファベットの『i』に変更して、『iiiあいすくりん』を正式にタイトルとして採用しました」(林さん)

あいすくりんのメインのキャラクターは「バニラン」。キャラクターデザインは、バニラ味のフレーバーと、動物のクマをミックスしたフォルムです。

バニラン

©シンエイ動画/あいすくりんs

性格は、おともだちが大好きで、少し優柔不断。頭にかぶる帽子を選ぶのに迷ったり、お店で買うものを悩んだりしているうちに溶けてしまうこともあります。

溶けるバニラン

©シンエイ動画/あいすくりんs アニメ第一話はこちら

しかし、溶けてしまっても大丈夫! 冷蔵庫に入って元通りに復活します。子どもにも分かりやすく、アイスならではの楽しい設定がなされています。

 

自分の子どもに見せたいと思えるアニメを


アニメ制作に至るまでの準備段階であるプリプロダクションについて、話を伺ってみました。

『iiiあいすくりん』が制作された大本のきっかけは、新たなオリジナルコンテンツをシンエイ動画設立45周年のタイミングに制作するというものでした。しかし、それだけが制作の動機ではなかったようです。

「制作陣に小さな子どもを持つ親が多くいまして、自分たちの子供に向けて自分たちが納得し、面白いと感じる作品を見せてあげたいという気持ちがありました」(林さん)

オリジナルコンテンツということで、原作付きアニメと違い、まずは題材やキャラクターの性格など細かな設定から決める必要がありました。顔のイメージすらも決まっていないまっさらの状態で、まさにゼロからの組み立て。答えがない状態で進めていく中で、題材としてたどり着いたのが子どもに人気のある「アイス」でした。

実際の調査によると、未就学児の一番なりたい飲食店職業ランキングでは、アイスクリーム屋が1位(※1)、小学生が好きなデザートランキング(平成生まれ)で、アイスクリームが1位でした(※2)

さらにアニメ業界では、これまで子どもに人気のあるアニメキャラクターの共通点として、“見た目が丸いキャラクター”というのがありました。アイスも丸みがあるので、業界的な共通点も満たしているということで、「アイス」を題材にすることが決定したのです。

その後、キャラクターを作るにあたって、約20人のクリエイターのイラストコンテストを実施。実際に自身の子ども達にもイラストを見せて、反応が良かったイラストをキャラクターデザインに採用しました。

イラストが完成した後、汗をかいたら溶けるなど本格的なキャラクターの肉付けが行われました。既存キャラクターと差別化を図るため、アイスのフレーバーにマイナーだけど人気のある動物を掛け合わせるデザインにして個性が出るように設計し、現在のキャラクターたちが完成しました。

(※1)出典:PR TIMES|未就学児が興味のある職業トップはアイスクリーム屋。セガトイズ調査 子どもに人気の飲食業トップ5を発表 
(※2)出典:ぐるなび|小学生が好きな食べ物ランキング発表!

 

3D技術を駆使した緻密な表現


アニメ『iiiあいすくりん』の最大の特徴は、フルCGアニメーションであるということ。

実は、当初は2Dアニメーションで制作する予定でしたが、オンリーワンのキャラクターとして、“とある表現”を実現させるために異なる手法へと変更されたのです。

キャラクターの顔面にアイスのフレーバーが組み込まれているキャラクターってなかなかいないと思い、そこにこだわっていました。
キャラクターの顔を単色で塗る表現もありますが、あえて顔面にアイスのフレーバーを組み込み、再現することによって子どもたちが見た時に『かわいい、美味しそう!』と感じるようなキャラクターを目指しました。
当初予定していた2Dだとキャラクターの顔面が動いた時に、フレーバーの実写の写真を動かすという表現が難しいと分かりました。そこで技術的な問題を解消するためにCGに切り替えて、何回かのテストをクリアし、うまく表現できそうだったのでCGに決定しました」(林さん)

汗をかくアイスクリン

©シンエイ動画/あいすくりんs

例えば、バニランの顔をよく見てみると、実際のバニラフレーバーの見た目が忠実に再現されているのが分かります。キャラクターが汗をかいたときに出る、アイスならではの、「溶ける」という表現もCG上難しく苦労したとのことでした。

 

親子で楽しめるコンテンツを発信


『iiiあいすくりん』は、TwitterやHPでも親子で楽しめるようなコンテンツが豊富です。Twitterでは、小さな子どもでも読めるようにひらがなを多用し、虹の絵文字など色にアクセントをつけてツイートしています。

Twitterで発信するコンテンツのコンセプトは、2つあります。

間違い探しやGifのゲームといった、親子で一緒にちょっとした合間に楽しめるようなこと。もう一つが、コロナ禍でおうち時間が増えたことを受け、AR(現実)塗り絵といった、趣向を凝らしつつも、身近にあるスマホなどのデジタルデバイスを活用し、家でも楽しめるようなこと。

AR塗り絵は子どもがやるには少し難しかった部分もありましたが、実際に塗り絵をしてくれた子どもたちからは「楽しかった」という声をいただいたようです。

Twitterのみならず、HPでは月別カレンダー手作りレターセットTwitterヘッダーやTwitterアイコンが無料でダウンロードできます。毎月19日を「あいすくりんの日」に制定しており、そのタイミングにあわせて親子の時間を気軽に楽しめるようなコンテンツを定期的に提供しています。

ちなみに、19日が「あいすくりんの日」になった理由は、あいすくりんの「あい(i)」を数字の「1」に見立て、「く」を数字の「9」で語呂合わせしたものを合体させた数字だったからです。

 

人気商品は「アイス屋さんごっこ」


『iiiあいすくりん』では、ECサイトによるグッズ販売にも力を入れています。

販売しているグッズの種類は雑貨系・アパレル系・食品系など多岐にわたり、中でも、子どもたちに人気があるのは「アイス屋さんごっこ」です。店舗を組み立てて、サンバイザーをかぶれば夢だったアイスクリーム屋の店員に変身することができます。

アイス屋さんごっこ

©ブルーシールアイス 販売サイトはこちら

その他にも、豊富なキャラクター数を活かして、トレーディングアクリルキーホルダー(2021年12月中旬に発売予定)やシールも人気あります。ランダムで一種類が入っているので、同じものを持っていたら友達と交換することも楽しみの一つです。

シールとキーホルダー

©シンエイ動画/あいすくりんs

このように子どもたちのニーズをくみ取ったグッズや、アニメの世界観・キャラクター設定などを活かしたグッズ展開をしています。

 

現在の子どもたちに通じる等身大の主人公に


色鮮やかなカラフルなフレーバーに個性の強いキャラクターが掛け合わさったあいすくりん達。もともとテレビアニメの放送回数全12回に合わせて、ブルーシールのフレーバーの中から選ばれたものでした。その中で、アニメの主人公は味も見た目もシンプルなバニラ味の「バニラン」が選ばれています。その理由はなぜでしょうか?

「当初はカラフル系にしようかなって話もありました。でも、バニラは、他のフレーバーを作るうえでアイスの素になる原材料なんです。味に主張がない分、そこにストロベリーやチョコレートを混ぜたりできる。いろんな色に染めることができる。
そういったバニラの性質を“バニラン”というキャラクター設定にも通じるようにしました。バニランは自分に自信がなかったり、なかなか欲しいものを決められなかったりする一面があります。一方で、バニラが他のフレーバーと交るように、いろんな子と仲良くできる友達想いの性格になると、みんなで話し合って決めました」(林さん)

あいすくりん達

個性的でカラフルな仲間がたくさんいます ©シンエイ動画/あいすくりんs

アイスを作る原材料としてのバニラの性質を理解し、それをアニメのキャラクター・バニランの性格にも取り入れることで、内面と外面がシンクロするキャラクター像の構築に行きついたのです。

さらに、昭和、令和といった時代ごとのアニメの主人公像についても林さんは次のように言及しています。

「昭和に放送されていたアニメの主人公は元気で明るいキャラクターが多く、それが『子どもは元気で明るくいるべきである』という、時代の風潮を映し出したところがあります。
他方で、令和の子どもたちは多様性が重んじられる傾向があります。周囲から求められるイメージに自分を近づけるのではなく、あるがままの等身大に近いキャラクターを立てる方が、子ども達に親しみを持ってもらえると考えて、バニランを主人公にしました。
明るくなくても、元気でなくても、失敗しても、自信がなくてもいいんです。他のキャラクターも同様に、同じ性格ではなくそれぞれ個性を持っていて、それを主人公たちが肯定するという見え方にするようなコンセプトの下でキャラクター作りをしました」

その時代にどんなキャラクター像が求められ、共感を得られるのかを敏感にキャッチして、それをキャラクター設定にも反映させているのです。

 

今後の展開【10月から再放送中】


2021年の6月にテレビのアニメ放送を終了した『iiiあいすくりん』。今後のアニメの展開や展望についてはいかがでしょうか。

「子ども向けキャラクターといえば『iiiあいすくりん』となるように、少しでも多くの子どもたちに覚えてもらいたいなと考えています。
そのために、アニメの続編についても前向きに検討しており、今後も継続的に制作していきたいと考えています。10月からは再放送を行っていまして、子どもたちに何回も見てらうことで、認知に繋げていきたいです。
また、テレビ放送後すぐに追いかける形でdTVのような配信プラットフォームでもアニメを配信しています。時代のニーズ合わせる形で、テレビだけに縛られずにネット配信からでもアニメを子どもたちに届けられたらいいなと考えています」(林さん)

先ほどの林さんの話にもあったように、2021年10月5日(火)よりテレビ東京系「きんだーてれび」内にて再放送中です。

【毎週火曜あさ7時30分放送】です、ぜひご覧ください!

アイスクリーム系のイベントがあれば、小さなぬいぐるみのバニランが現地レポートをしていましたが、今後のリアルイベントにもっと対応できるようにバニランの着ぐるみを新調したとのことです!

コロナが収束し落ち着いたらイベントにてバニランとの触れ合いが楽しみでしょうがいないですね。みなさんも、ぜひあいすくりんに会いに行ってくださいね。

 

【友達の輪バトン】次は「PUI PUIモルカー」


次回は、【シンエイ動画45周年特集】の第2弾として「PUI PUIモルカー」にバトンをつなぎます。羊毛フェルトで作られたふんわりとしたかわいいモルカーが大活躍する作品です。どうぞ、お楽しみに!

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記事:キャラクター事業部 野村隆仁

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