日本初のプロアイスホッケーチームH.C.栃木日光アイスバックス公式キャラクター「しかっち」に学ぶ
H.C.栃木日光アイスバックス(ホッケークラブ とちぎ にっこうアイスバックス。以下アイスバックス)は、栃木県日光市に本拠地を置く、アジアリーグアイスホッケーに加盟するプロアイスホッケークラブです。そんなアイスバックスを盛り上げる公式キャラクター「しかっち」の役割や誕生背景など、運営会社の株式会社栃木ユナイテッド ・事業推進本部長の衣笠氏に伺いました。
【しかっちの役割】
しかっちの役割はチームとファンを繋ぐことです。試合になると選手はリンク、ファンは応援席と完全に別れてしまうので、その間をしかっちが行き来して、チームとファンの一体感を作り出します。ときには、ファンと一緒に選手を応援し、試合を盛りあげます。
【しかっち誕生背景】
しかっちは日本リーグ初の“市民クラブとして生まれ変わったアイスバックスの10周年を記念して2008 年に誕生しました。人々に愛されるキャラタクターになるよう願いが込められたしかっちは、先代のバウ君から公式キャラクターとしての役目を引き継ぎます。しかっちを生み出したのは俳優やイラストレーター、絵本作家などマルチに活躍するリリー・フランキー氏。運営会社の元取締役でコラムニストのえのきど氏からのご縁でした。チーム名にあるバックスは”鹿”を意味し、試合に”勝”という願いも掛け合わされ、「しかっち」と命名されました。
プロフィール
名称:しかっち
背番号:41
すみか:栃木県日光市の日光霧降(きりふり)アイスアリーナの裏山
特技:スケート
トレードマーク:額の星のマーク
作者:リリー・フランキー
将来の夢:アイスホッケー選手になりたい。
【しかっちの活動】
ーイベント編ー
しかっちと会うのに、アイスバックスの試合は欠かせません。ほぼ100%の確率で出会えます。インターバル中にアイスガールと一緒に、試合のジャッジを取り入れたフィンランド生まれのアイスホッケーダンスをお披露目することも。客席で応援しているファンの冷えた体を温めるダンスとして好評です。
インターバルのコンテンツは運営スタッフで考えます。ファンに人気なのはボール投げゲーム、略して「BNG(Ball Nage Game)」。リンクの中央の的を目指してボールを投げ、うまく入ればスポンサー企業の商品がゲットできるというもの。百円でボールを購入し、数万円の商品が当たることもあり、人気のコンテンツとなっています。
アイスバックスの試合観戦用に、東京からバスが発車しアイスホッケーの体験もできる女子ツアーも催行されました。1日目はアイスホッケーを体験。2日目は試合観戦といったスケジュールで、体験時間にしかっちも登場しています。
試合以外では同じ地域のプロスポーツチームのキャラクターとスポーツイベントにも顔を出すしかっち。実はスポーツが盛んな栃木県には、アイスホッケー以外にもサッカー、 バスケットボール、サイクルロードレース、野球などのプロチームがあります。それぞれのチームのファンはスポーツ好きな方が多いので、自分たちのスポーツを知ってもらうきっかけとなり、相乗効果の高い交流イベントとなっています。
ーハピトチ活動編ー
アイスバックスは「地域密着」を活動理念の一つとして掲げています。チームと地域の皆さん、チームとファンの皆さんの距離が近くなるように、「ハピトチ」という様々な地域密着活動に取り組んでいます。そこにしかっちも加わり、地域の子どもたちと交流しています。
今年2021年のアイスバックスは、日光市内の小学一年生に向けて、ランドセルカバーを配る活動をしており、そのランドセルカバーにはしかっちが描かれています。
ハピトチは、青少年健全育成や地域交流をはじめとした活動を通じて、アイスホッケーの普及・育成や地域振興に貢献しスポーツ文化を 守り、育て、将来へ継承していくことを目的に活動しています。
ースクール編ー
アイスバックスに所属するスクールコーチが 指導にあたるアイスバックス日光ジュニア(チームの選手が直接指導することも)。栃木県内出身者の選手を増やしていくことを考え、長年にわたり指導しているスクールのカリキュラムと、トップチームから考えた各年代に必要なプログラムで、一人ひとりのジュニア選手に合わせ指導しています。しかっちはそんなジュニアたちの試合にも応援にかけつけます。アイスバックスの公式試合前に子どもたちとの交流戦に参加することもあります。
ー情報発信編ー
試合情報などのオフィシャルな情報はアイスバックスの公式サイトで発信しており、しかっちも度々登場します。公式サイトと合わせて、インスタグラムやツイッターでは主に選手たちの情報を発信しています。選手たちにはSNS講習をしっかり受け、各選手が見られているという意識を持って、ファンが楽しめるような情報を発信することを心がけています。
選手への直接応援にはエンゲートを活用しています。エンゲートとはSNS型スポーツギフティングサービスで、ユーザーがあらかじめポイントを購入し、好きな選手やチームに「投げ銭」として贈ることができるというものです。例えば「素晴らしい。ナイスシュート!」や「勝ったね。おめでとう!」などのメッセージとともに、ギフティングすることが可能です。エンゲードは、アイスバックスの他にもサッカーJリーグのチームやバスケットボール男子Bリーグのチームなど、多くのチームが参加しています。2020年6月に阪神タイガースがプロ野球で初めてエンゲートと提携し、6月26日からの対横浜DeNA3連戦において「スカパー!を見ながらエンゲートで阪神タイガースを応援しよう!」という企画を実施し話題となりました。
それ以外にも、クラウドファンディング「キャンプファイヤー」を使ったアイスバックスの応援と日光を楽しめるプロジェクトを発信しています。応援リターンでは地元のリターン協力の店を紹介し、地域の活性化に繋がるよう活動しています。
ーグッズ編ー
しかっちは、たくさんのグッズとして展開されており、ぬいぐるみやキーホルダーが女性や子どもに人気です。グッズの開発の際に心がけていることは、ターゲット層を考えて開発すること。アイスバックスの昔馴染みのファン層は、40代〜50代の男性がメイン。そこに最近増えてきた女性や子どものファンを意識し、それぞれのニーズにあう商品になるよう開発されています。なのでグッズのバリエーションはとても豊富です。
【ブランド認知を保つための施策と差別化】
しかっちだけで無く、選手も一丸となってうまくチームのプロモーションを実施しているアイスバックスですが、その施策と差別化について衣笠氏は言います。
「他のアイスホッケーチームとの違いという点で、私たちアイスバックスはより早くプロ化をしたチームです。企業チームの場合は、いかに予算を使ってその年のチーム運営をするかという視点で物事を考えがちですが、プロチームは試合当日のチケット代やファンクラブ会員費などがダイレクトに実入りになってきますので、いつもお客様が何を望まれているのかに耳を傾けて振り返り、確認、プランニング、実行と移して新たなシーズンへ移行するようにしております。なので、常にお客様の目線に立って運営や企画を考えるようにしています。
そういった、地道な準備がアジアリーグ一1の観客動員数を維持して、チームが愛されているのではと考えています。
日光の霧降ならではの雰囲気や、楽しみを見出して根強いファンに、リピーターになってくれる方を今後も増やして行けるように頑張りたいです」
企業チームから市民クラブへ生まれ変わりプロという、よりシビアな環境の中で行われているプロモーション活動は企業のプロモーションやブランディング活動に通じるものを感じました。
【コラボレーション】
自治体や、他のプロスポーツチームのキャラクターなどとコラボレーションすることが多いしかっち。ご当地ヒーローとも共演しています。とちぎテレビの開局15周年記念番組として製作され4年間続いた人気番組「雷様剣士ダイジ」に、栃木県佐野市のキャラクターさのまると一緒に登場しています。「第1回雷様剣士ダイジ 栃木ゆるキャラ大相撲」の模様が放送されました。
また、アイスバックスの開幕戦でも雷様剣士ダイジとコラボレーションしています。(アイスバックスファン@otooutama出典)
アイスバックス開幕戦のお写真(雷様剣士ダイジ編3):
氷様剣鹿しかっち!
ひょごる3人衆を一刀両断!
ついでにダイジも一刀両断!
つば九郎並の暴挙!#icebucks #雷様剣士ダイジ #DJ_Kei pic.twitter.com/k0tR7km8ow— おとうたま (@otoutama) September 3, 2017
今年、2021年には合同会社EXNOAと株式会社サイバーエージェントが実施する、史上初となる女子アイスホッケーを題材としたアニメ「プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~」の監修にアイスバックスが参加します。なんでも、メインプロデューサーが早稲田のアイスホッケー部出身で、アイスバックスの運営会社役員と縁があったことがことの発端でした。10月からの放送に向けて、選手とプラオレ!のコラボ企画もスタートしています。近いうちに、しかっちとプラオレ!のコラボレーションも見れるかもしれません。期待が膨らみます。
この他にもアイスバックスはファッションブランドのビームスとコラボしていて、アイスバックスのユニフォームはビームスのデザイナー水尾旅人氏がデザインしています。
【しかっちが誕生し、どんな変化がありました?】
しかっちが生まれたことで、昔に比べ女性や子どものファンが増えました。企業チームからクラブチームに変わっていった背景を持つアイスバックスですが、クラブチームとして生まれ変わった10年という月日の中で、3世代・4世代にわたるファンの方たちが多くなったようです。アイスホッケーも男性メインのとっつきにくいイメージでしたが、カジュアルで親しみやすいイメージに変わってきています。そのイメージの変革に、しかっちが1役買っていると運営の皆さんも感じているようです。
【今後の展望】
「アイスホッケーは世界ではとてもメジャーなスポーツですが、日本国内ではまだまだマイナーなので、もっとたくさんの人にこの競技の面白さを知ってもえるよう、さらに認知度をあげていきたいですね。しかっちにはその先陣に立って、アイスホッケーの楽しさを広げていって欲しいです」と、衣笠氏に抱負を語っていただきました。
【仲良しキャラクターを教えてください。誰に友達の輪バトンを繋ぎますか?】
この冬、アイスホッケーを全国へ盛り上げてくれるしかっちのお友達で、アイスバックスが監修を勤めるアニメ「プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~」の主人公 水沢 愛佳(みずさわまなか)さんをご紹介です。
記事:キャラクター事業部 釜澤 直恵