【赤城乳業 ガリガリ君】大人も楽しめるアイスは青春の味。キャラクターの世界観「元気で、楽しく、くだらない」に学ぶ

サクセスに学ぶ

1931年に前身となる広瀬屋商店を創業した後、1961年に設立された赤城乳業株式会社(以下、赤城乳業)。同社の年間4億本以上の販売本数を誇る大ヒット商品が「ガリガリ君」です。

同商品は年間に約20種類、歴代としてはこれまで150種類以上のフレーバーを発売しており、今年で40周年を迎えました。

今回は「ガリガリ君」のキャラクターとしての活躍ぶりについて、赤城乳業マーケティング部 岡本秀幸さんにお伺いしました。ガリガリ君のキャラクターデザインのリニューアルに至るまでの経緯や、SNSでの活動、多彩なPR展開、そして今後の展望をお送りします。

<目次>(※クリックするとその段落へ移動します)
わんぱくな小学生「ガリガリ君」誕生
ネガティブな印象を一新!お客様の声を反映し現在のデザインに
応募総数約5万票の中から新作“うめ味”誕生
ガリガリ部でファン同士の交流の場を提供
アイス売り場を飛び出して日常のワンシーンへ
大人になっても戻ってこられる「青春の味」
電車のドアステッカーにも登場
日本で一番食べられているアイスへ、そして“世界のガリガリ君”へ
《こぼれ話》工場見学で“隠れガリガリ君”を探そう!

 

わんぱくな小学生「ガリガリ君」誕生


ガリガリ君はわんぱくな小学生の男の子。いがぐり頭に大きな口が特徴です。1981年の商品の発売当初からパッケージに登場しています。

大きな口は、おいしそうにアイスを頬張る元気な姿を表現しており、これは妹のガリ子ちゃんにも共通しています。妹のガリ子ちゃんは2006年の秋冬商品のパッケージで初登場。

2人が担当するアイスキャンディーは、かき氷が入ったアイスキャンディーのガリガリ君、シャーベット状のアイスが入ったなめらかな食感が特徴のアイスキャンディーのガリ子ちゃん、といった具合に分けられています。

©AKAGI×GARIPRO

「ガリガリ君」という商品が生まれたきっかけは、1964年に発売された赤城乳業のヒット商品「赤城しぐれ」を、子どもが遊びながら片手で食べられるようにアレンジして発売したことです。

これは、1981年当時、子どもが外で遊ぶことが多かったという時代背景が反映されています。当時の生活シーンに溶け込んだ商品を目指し、かき氷にアイスキャンディーでコーティングすることで溶けにくく、棒が抜けない、現在のかたちになりました。

商品名の名付け親は、当時専務だった代表取締役会長の井上秀樹氏。当初は、かき氷の食感を表す擬音語「ガリガリ」だけの予定でしたが、それだと食感だけしか伝えきれません。「お客様にもっと親近感を抱いてもらい、愛されるように」という想いから「君」を追加し、「ガリガリ君」となったのです。

そして、商品の命名と同時に「ガリガリ君」というキャラクターの誕生にも繋がりました。

 

ネガティブな印象を一新!お客様の声を反映し現在のデザインに


現在発売されているガリガリ君のキャラクターデザインは、リニューアルされた二代目です。ガリガリ君の初代のキャラクターデザインがこちらです。

左から1981年、1986-89年、1991年のパッケージ ©AKAGI×GARIPRO

二代目とはだいぶ印象が異なり、この時の設定は「中学3年生」でした。

前述の通り、ガリガリ君は外で遊ぶ子どもが片手でもアイスを食べられるようにと開発された商品でした。そのため、キャラクターデザインも「わんぱくな少年」というイメージより「ガキ大将」という要素が色濃く出ていたのです。

左から1994年、1995年のパッケージ ©AKAGI×GARIPRO

1990年代に入って、キャラクターの輪郭線が太く、眼の黒目も大きくなりました。また、強く拳を握っていた腕は、サムズアップサインなどのジェスチャーに変更することで、ガキ大将の持つ「強さ」がだいぶ柔和になった印象です。

そして、キャラクターデザインが現在のものへと大きく変わる契機となったのが、1999年に実施されたお客様調査でした。

「もっとガリガリ君がお客様に愛されるためにはどうしたらよいのか」を調査した際に、キャラクターに対して女性の方から「汗が汚い、歯茎が気持ち悪い、田舎臭い男の子」といったネガティブな意見が寄せられたのです。

こうしたお客様の声を反映させた結果、翌年2000年に生まれ変わったキャラクターデザインがこちらです。

上段が2000年。下段は左から2003年、2006年のパッケージ ©AKAGI×GARIPRO

初登場時はCGでデザインが施されていました。発売当初からのガリガリ君らしさである「元気・楽しさ・いがぐり頭」を残しながら、キャラクターを全面的にリニューアルし、現在発売されているお馴染みのキャラクターデザインに行きつきました。

 

応募総数約5万票の中から新作“うめ味”誕生


ガリガリ君はSNSを通じてファンと積極的に交流しています。

2021年に40周年迎えるにあたって、Twitterでは「ガリガリ君の新しい味をみんなで決めよう」と題して、ガリガリ君の新しいフレーバーの募集を開始しました。

HP特設サイトへの応募総数はなんと約5万票。かなり大きな反響を得ました。

さらに、新しいフレーバーのパッケージが出来上がってから配送されるまでの一連の流れをTwitter上で公開。普段は見ることができない製造工程を垣間見られることもあり、Twitterでは大きな盛り上がりを見せました。

特に、反響が大きかったのは、パッケージの色がお披露目された時のツイートです。

ベルトコンベア上を流れるピンク色のパッケージ。

徐々にアイス本体や、パッケージの色が判明していくなかで、フォロワーの方が「この味ではないか」と予想をし始めました。それが大きな盛り上がりへとつながったのです。

こうした経緯を経て、2021年6月1日にお客様とともに作り上げたガリガリ君40周年記念商品の「うめ味」がついに発売されました。梅果汁と梅酢を使用し、梅干しのような風味が楽しめるのが特徴。ちなみに「うめ味」が獲得した票数は約1400票、2位に2倍近い差をつけて堂々の1位に輝きました。

「Twitterでは商品の告知がメインではありますが、ファンの方が純粋に楽しんでもらえるような内容を発信している」(岡本さん)という想いが今回の企画にも表れています。

©AKAGI×GARIPRO

 

ガリガリ部でファン同士の交流の場を提供


ガリガリ君はTwitterだけでなく、Facebookでもファンとの活発な交流を図っています。

※画像をクリックするとサイトへ移動します ©AKAGI×GARIPRO

Facebookでは、誰でも閲覧可能な「ガリガリニュース」と、承認された人しか参加できないプライベートグループの「ガリガリ部」の2つを展開しています。

両者の目的は異なっており、前者ではガリガリ君の情報を広く発信するため、後者ではファンとの交流をメインにしており、抽選形式で参加できる年に一回の日帰り合宿といったイベントを通じた企画でファンとの交流を深める場所を提供するのが目的です。

Facebookは基本的に実名で登録されているので、「ガリガリ部」ではファン同士も安心して交流することが可能です。ガリガリ君への愛が強いファンの方からは、温かいコメントが多数寄せられています。

「こうした『ガリガリ部』のようなファンコミュニティを作ることで、一方的な情報発信ではなく、ファン同士で楽しめる場所を提供するのも、ガリガリ君のファンをもっと増やすための大事な仕事の一つだと感じています」(岡本さん)

 

アイス売り場を飛び出して日常のワンシーンへ


SNSに限らず、ガリガリ君は様々な商品とコラボを行うことで、日常のワンシーンに溶け込んでいます。

※画像をクリックするとサイトへ移動します ©AKAGI×GARIPRO

2020年は、コロナ禍でお家時間が増えたことを受け、「ガリガリ君オリジナルペーパークラフト」を提供開始。子どもたちが楽しみながらガリガリ君と触れ合えるようにと、ペーパーガリガリ君ソーダ・ペーパーガリガリ君お面の2種類をHPからダウンロードできます。

他にも、コロナ禍以前から販売している消しゴムや鉛筆などの文房具を始め、最近では40周年を記念して数々のコラボレーション商品を展開しています。

MLB(メジャーリーグ・ベースボール)唯一の公式選手用キャップサプライヤーのNEW ERAからは「キャップ」、資生堂のボディケアブランド「シーブリーズ」から制汗剤「デオ&ウォーター ガリガリソーダの香りと、ガリガリ君グレープフルーツの香り」、理美容品専門商社の菊星から『ガリガリ君クール シャンプー』、ライオンから数量限定で『ライオンこどもハミガキ』を発売しました。

©AKAGI×GARIPRO

「ガリガリ君に触れる機会が、アイス売り場に行かないと、または家族で子供と一緒にアイスを食べないと生まれない。そういう状況にならないように、ガリガリ君を使ってみんなに楽しんでもらえる、一緒に遊んでもらえるようにしたいという想いがありました。
生活動線を意識し、ガリガリ君とのタッチポイントを増やすために幅広くコラボを展開しています」(岡本さん)

 

大人になっても戻ってこられる「青春の味」


「家族で楽しめるアイス」を目指し、ファミリー向けにはマルチパックも販売しているガリガリ君。

アイスキャンディーといえば、どちらかというと子どもたちに愛されている印象が強いですが、ガリガリ君の主な顧客層は40~50代の大人。中には繰り返し購入する「ヘビーユーザー」も少なくないとのこと。これは何故でしょうか?

「ガリガリ君のヘビーユーザーになる人は、幼い頃によく食べていたけど、途中で一旦食べなくなることが多いようです。その理由は、社会人になって凝った料理やガリガリ君よりも高級なアイスを食べる機会が増えるからです。
しかし、小さい頃食べていたガリガリ君を大人になって、もう一度食べたくなるシーンがあります。例えば、お酒を飲んだ後の帰り道や暑い時期のお風呂上り、地元のお祭りに参加した時など。
このようなシーンで、『口の中をリセットしたい、飲み直したいな』という気持ちになったとき、ガリガリ君が丁度その条件を満たしていると考えています。中身が氷なので、食べ上りがすごくさっぱりしていて、冷たい水を飲んだかのような爽快感があります。その時に、ガリガリ君のおいしさに改めて気付いて、ヘビーユーザーになっていただいているのだと考えています」(岡本さん)

小さい頃に食べていたお菓子を、大人になってから無性に食べたくなることってありますよね。ガリガリ君はもう一度食べたいと思ったときにいつでも戻ってこられるように、「氷の食感は時代に合わせて微調整しつつも、ガリガリ君のソーダ味は、発売当初からほとんど変えていない」(岡本さん)とのことです。

日常の何気ないシーンと密接な関係を持つガリガリ君の味。もっと愛されるように「青春」という言葉もキーワードの一つだと岡本さんは語ります。

「子どもが最初に食べるアイスがガリガリ君であってほしいという想いはもちろんですが、成長して学生になった後のお客様の日常のシーンにもガリガリ君がいてほしいです。
例えば、学校帰りや部活帰りにちょっとコンビニに寄って、アイスを頬張りながらみんなで談笑する場面に登場してほしいです。また、ガリガリ君のパッケージは一つの味につき表情や動きが異なる3種類を展開しているのですが、それによって『俺たちのパッケージ、それぞれ違うね』といった会話が生まれる、コミュニケーションの一助となれればと考えています。
みなさんの『青春の1ページ』に、ガリガリ君が身近な存在としていてくれたらと思います」

 

電車のドアステッカーにも登場


次は、ガリガリ君のキャラクターとしてのプロモーション、イベントなどでの具体的なPR行動に目を向けてみましょう。

ガリガリ君は「次にどんな新しい味が出るのか」というお客様からの期待に応えるべく、新商品の告知を大事にしています。

全国各地のイベントやお祭りでは、ガリガリ君は「無料でアイスを配る」ことでPR活動に貢献しています。2017~2018年頃は、夏限定で同じ月に2・3回、年間で平均すると月に一回ぐらいのペースでアイスの配布が実施されていました。

その一例を挙げると、くまモンの誕生日である3月11日付近に毎年行われる「くまモン誕生祭」とのコラボ。熊本県で行われる二日間の誕生祭では約10万人を動員しており、ガリガリ君のアイスも毎回約1万本を配るほど大盛況です。さらに、開催のタイミングに合わせて、『ガリガリ君 九州みかん』を毎年発売しており、両ファン待望の商品となっています。(※現在は新型コロナウィルス感染予防ためサンプリングは休止しています)

イベント以外では、首都圏の電車のドアステッカーに登場し、通勤中の乗客に向けて新商品の告知をして“お客様とガリガリ君の接点”を増やしています。そのほかにも、ホームセンターや雑貨店にガリガリ君のグッズを販売し、アイス売り場に行かなくてもガリガリ君に触れる機会を増やしています。

ガリガリ君のドアステッカー ©AKAGI×GARIPRO

また、こうしたプロモーションでもガリガリ君のキャラクターの世界観「元気で、楽しくて、くだらない」を崩さぬように配慮しています。

「ガリガリ君はお客様から自然にいじってもらえるような、親しみやすい雰囲気を大事にしています。『かわいらしさ、おもしろさ』をお客様に感じてもらえたら嬉しいです。
また、お客様から愛されるために、下から目線という謙虚な姿勢も忘れていません。こうしたガリガリ君の行動に対して、周囲からの様々な評判や口コミが入ってくることで、お客様に愛される、信頼されるキャラクターになってほしいですね」(岡本さん)

 

日本で一番食べられているアイスへ、そして“世界のガリガリ君”へ


これまでSNSでのファンが喜びそうな大胆な企画やファン同士の交流の場の提供、日用品とのコラボ、屋外イベントでの活動について伺ってきました。今後の展開については、どのように考えているのかをお伺いました。

「まず、現在の状況の中でお客様に楽しんでもらうメッセージをしっかり伝えるために、商品のパッケージコラボを増やしたいと考えています。お客様に一番楽しんでもらえるように、その商品を買えばキャンペーンの告知から応募までが完結する形にしています。
次に、ガリガリ君をより多くの人に食べてもらうために、まだガリガリ君が接点を持っていない業界、業種とコラボできたらいいなと考えています。
例えば、これまでコラボしてきたサッカー日本代表、ポケットモンスター、くまモン。ガリガリ君のイメージとは離れているけど、皆にとってなじみ深い存在とコラボしたいですね」(岡本さん)

そこには、ガリガリ君は様々なコラボを通じて、「ずっと同じ世界に留まるのではなく、広い世界に可能性を広げいく」という確かな信念がありました。そして、ガリガリ君のビジョンは既に海外にも向けられています。

「今は日本がメインですが、将来的に世界でも食べられるアイスキャンディーとしてガリガリ君を広めていきたいです。そのためにも、『ガリガリ君が日本で一番食べられているアイスキャンディーになりたい』という思いを大切にしています。
現在、ガリガリ君を販売している海外の国はタイと台湾だけですが、将来的には日本でナンバーワンそして、世界でも認知されるアイスキャンディーを目指したいです」(岡本さん)

台湾で発売されているパッケージでは、右上の「JAPAN’S №1 ICE CANDY」という文字が入っている ©AKAGI×GARIPRO

 

《こぼれ話》工場見学で“隠れガリガリ君”を探そう!


赤城乳業本社と本庄千本さくら『5S』工場に「隠れガリガリ君」がいるのをご存知でしょうか?

「本来は、いらっしゃった人だけの“楽しみ”なのですが…」とのことですが、今回は特別に少しだけ「隠れガリガリ君」の居場所を教えていただくことができました! 遊び心あふれるちょっとした仕掛けにも、お客様に楽しんでもらいたいという気持ちが込められていますね!

2021年3月以来、コロナ禍の影響で工場見学は一時休止になっています。工場見学が再開したら、皆さんもぜひ「隠れガリガリ君」を探しに工場見学に行ってみてはいかがでしょうか?

工場見学ページはこちら▶

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記事:キャラクター事業部 野村隆仁

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