伊藤園お~いお茶くんに学ぶ。「お~いお茶」のこだわりを伝えるマスコットキャラクターとしての使命とは?

伊藤園本社前のお茶くん
サクセスに学ぶ

1966年設立、世界初の「缶入りウーロン茶」と「缶入り煎茶(緑茶)」を開発し、お茶を飲む新しいシーンを切り拓いてきた株式会社伊藤園(以下、伊藤園)。

今回、お話を伺ったのは発売から30年以上経ったロングセラー商品「お~いお茶」のマスコットキャラクターで、2018年に登場した「お~いお茶くん」(以下、お茶くん)です。

「親近感」を感じるおっとりした見た目とは裏腹に、伊藤園の使命を小さく細いその背中で背負う姿には脱帽でした。

みんなから愛されているだけでなく、コロナ禍でも新たな企画に果敢に挑戦し、ときには会社の危機を救う。

そんな活躍ぶりを、今回はお茶くん本人から伺いました!

<目次>(※クリックするとその段落へ移動します)
愛嬌とシンプルさを兼ね備えたフォルム
「お~いお茶」のこだわりを伝えるナビゲーター
フォロワー20万人記念企画に約2万3,000通!
スローガンのもとに発信した2つのSNS企画
「アバター」活用で2,300人の救世主に
“王位”、お茶。将棋とのコラボ
日常性を大切に。お茶を飲む新たなシーンを開拓
みんなの“お茶くん”になりたい!
≪後日談≫お茶くんの認知度調査の結果がついに…!
【友達の輪バトン】次は“ターン王子”

 

愛嬌とシンプルさを兼ね備えたフォルム


お茶くんプロフィール

©伊藤園

お茶くんは1989年生まれでお茶年齢は32歳。2018年に登場し、誕生日は「お~いお茶」の発売開始日と同じ2月1日です。「何か困っているの?」とツッコミをいれたくなるような困り眉が何とも愛おしい…! 口をパクパクさせることで、躍動感が出るのもお茶くんの特徴の一つ。

お茶くんのデザインの元ネタはもはや説明不要と言えるでしょう。「お~いお茶」のペットボトル商品のフォルムをそのまま活かしたシンプルな形状、どの商品をPRしているのか一目瞭然です。見た目も、名前もここまでストレートに表現したものは珍しいため、伊藤園の社員の方も「初めてお茶くんの名前を聞いた時は衝撃的だった」と語っていました。

また、デザインのモチーフは「竹」。1989年に「缶入り煎茶」が、「お~いお茶」に名称とデザインを変更した時から踏襲されています。竹を選んだ理由は、清涼感や清々しさを表現するため、日本では竹が水筒として使用されることがあるためです。

ちなみに、お茶くんの頭にあるキャップは取れ、それを自由自在に飛ばす特技があります。かわいらしいだけではなく、ちょっとツッコミやすいところを持たせ、心の掛け合いに通じるように工夫されています。また、お茶くんはペットボトルの商品とイコールの存在といえるため、アイキャッチとしてラベル上には登場していません。

 

「お~いお茶」のこだわりを伝えるナビゲーター


お茶くんが活動をするきっかけとなったのが、「お~いお茶」という商品をPRする上での難しさにありました。お茶くんは、当時をこう振り返ります。

「『お~いお茶』の商品のこだわりや良さをお客様に伝えるのが、ずっと難しかったです。果汁飲料だと果実感、炭酸飲料だと爽快感について訴えるという伝え方がありますけどね。
でも、お茶の場合は違うんです。収穫時の鮮度を保って、お客様に届けているのが一番美味しいお茶の状態。だから、お客様がフタを開けた瞬間に美味しいと感じてもらうための『鮮度へのこだわり』をどう伝えるべきかが課題でした。
そこで、僕が登場したんです! 堅苦しく説明するんじゃなくて、僕への興味を通じて、もっとフランクに商品のことを知ってほしいなと考えています」

お~いお茶に囲まれるお茶くん

歴代のお~いお茶に囲まれるお茶くん

「宵越しの茶は飲むな」ということわざがあるように、お茶は淹れた瞬間から徐々に劣化が始まっていきます。時間による酸化は、原料の茶葉の段階だけでなく、液体になっても変わりません。お茶を商品として市場に流通させるためには、並々ならぬ努力と工夫が必要になるのです。

その一例として、実際のペットボトルの肩部に刻まれている70本のカットが挙げられます。これはお店に陳列される際に、上から入ってくる光を乱反射させて分散させる狙いがあります。お茶にとって、光も鮮度を保つ上で大敵です。線を入れることで、光による酸化を防ぎ、お茶の鮮度を長持ちさせる効果があります。

ペットボトル肩部

©伊藤園

こうした商品細部の加工は、お茶くんのフォルムにも忠実に再現されています。直接的に説明するよりも、お茶くんからペットボトルの肩部を指差して「僕のここ見て~」と伝えてもらうことで、もっと近い距離感でお客様に「鮮度へのこだわり」を知ってもらえます。

このように、お茶くんは“お茶目”なその見た目とは裏腹に、伊藤園の「鮮度へのこだわり」を伝えるナビゲーターとしての重大な使命を担っているのです。

 

フォロワー20万人記念企画に約2万3,000通!


お茶くんはTwitterを主なSNSの情報発信の場所にしています。また、Twitterでは伝わらない、より具体的な情報発信や深くコミュニケーションを取りたいときはYouTubeを活用しています。

Twitterでは、お茶くんに課されている目標の一つ「お客様とのコミュニケーション」を達成するために、フォロワーの方に親近感を感じてもらえるような投稿を心掛けています。

商品情報の一方的な押し付けにならないように、コンテンツや投稿文にツッコミ所をあえて持たせ、双方向性を持たせるように配慮しています。さらに、コメントへのいいね返しや、「お~いお茶」に対するツイートには引用リツイートでお返しをすることも忘れません。

こうした努力を積み重ねた結果、お茶くんはTwitter開設から1年半後の2021年5月、遂にフォロワー20万人を達成しました。その達成記念に行われたお茶くんのぬいぐるみを3名様にプレゼントする企画には、なんと約2万3,000通という膨大な数の応募が殺到しました。

コメント付きで「わが家へ来てくれ」や「おめでとう!」という言葉も多くもらった中で厳選した抽選が行われました。当選したフォロワーには、丁寧にラッピングが施された箱入りのお茶くん(ぬいぐるみ)が贈呈されました。

ここまでの応募数であれば、販売してもいいような気がしますが、お茶くんのキャラクターグッズは販売されていません。なぜなのでしょうか?

「僕のキャラクターグッズは、あくまでも『お客様への感謝への気持ち』として作っているんですよ。僕の目標は『お客様とのコミュニケーション』。
だから、感謝の気持ちを示すためにも、世間に出回ってない特別感があるものを届けたいと考えています。目の前のお客様に対してしっかりと感謝を伝えることを第一にしています」

お茶くんは、お客様が愛着や親近感を感じてもらうことによって、お店でお茶を買う時に「お~いお茶」を迷いなく手に取ってもらえるような関係性を築き上げていくための存在なのです。

 

スローガンのもとに発信した2つのSNS企画


お茶くんは、お客様とのコミュニケーションだけでなく、伊藤園のスローガン発信の最前線に立っています。

伊藤園では、2021年度スローガンとして「とどけ!お茶のチカラ」を掲げており、お茶の3つのチカラ「おいしさ・すこやかさ・たのしさ」を届ける施策を行っています。

伊藤園の2021年度スローガンとして「とどけ!お茶のチカラ」

©伊藤園

「お茶のチカラ」とは、お茶が持つ味の「おいしさ」という力、飲み続けることで体に得られる「健康性」という力だけではありません。例えば、会議でお茶が用意されていることで生まれる些細な雑談や、茶道で自分と向き合う時間など、コミュニケーションを生み出す力や内面を整える力も含まれます。

特に、コロナ禍の現在においては、お茶に含まれるカテキン成分がウイルスの拡散を不活性化させる効果を持つことが(※1)、「お茶のチカラ」の価値をさらに押し上げるものだと考えています。お客様の日常の中に自然な形で「お茶」がある──そんな生活へのきっかけ作りをお茶くんは担っているのです。

 

このスローガンの下、お茶くんには重大なミッションが課せられました。それが2021年6~8月にかけて行われた「#茶畑エクスプレス」と「#真夏の火入れ大作戦」です。両企画とも、世界でたった一つのオリジナルのお茶を自宅で体験できるという主旨が共通しています。

「#茶畑エクスプレス」は、摘みたてのお茶葉を、24時間以内に公募で当選した24名の参加者「#茶レンジャー」の元に届け、「お~いお茶」づくりに挑戦してもらうキャンペーン。茶レンジャーの中には北海道の方もいました。厳しい条件下でしたが、それでもお茶くんは茶畑に赴き、そこで摘み採った茶葉を一枚一枚選別した後、飛行機で新千歳空港まで直行し、現地の配送業者に配送を依頼して、ギリギリ24時間以内に届けることに成功しました!

ミッションを見事に遂行したお茶くんには、「#茶レンジャー」の方から温かい感謝の手紙が送られるなど大きな反響を呼び、「#茶畑エクスプレス」は第二弾の開催が決定されました。ちなみに、お茶くんは後の動画で「いや~大変だった。朝早かった~」と思わず本音をポロリ。

「#真夏の火入れ大作戦」では、送られてきた専用キットを使用し、茶畑から採って乾燥させた「荒茶」を選別し火を入れる工程を自宅で体験できという内容でした。本来は一般の人ではやらない作業ですが、自宅で気軽にお茶づくりができるということもあり、1,000人の募集枠に対して応募者はなんと2万人も集まりました! いずれも参加型企画として、フォロワーの方にお茶と触れてもらう機会を作り出すことに成功したといえます。

(※1)参考:【論文掲載】茶カテキン類による新型コロナウイルス不活化効果を試験管内の実験で確認(京都府立医科大学と伊藤園の共同研究)

 

「アバター」活用で2,300人の救世主に


伊藤園には、ティーテイスター(※2)という社内資格を有する方が約2,300人います。ティーテイスターの役割は、お茶に関するセミナーや日本各地の店頭などでのお茶のふるまいを通じてお客様にお茶の魅力を伝えることです。しかし、コロナ禍で店頭に立つことが難しくなり、従来の活動ができなくなってしまいました。

この問題には伊藤園の経営陣も頭を抱えるほどでしたが、その窮地を救ったのが、何を隠そう「お茶くん」だったのです。

お茶くんのアバター活用

©伊藤園

なんと、お茶くんが「遠隔操作アバター」として店頭にある画面に登場したのです! 操作はティーテイスターのみなさんが行い、非接触型でありながらもお茶くんの姿を借りることでお客様とのコミュニケーションを可能にしました。会議でアバターの話を提案した際には「これや…!えらいもんがあるな~」と大盛り上がりしたそうです。

店頭でお茶くんを表示させてコミュニケーションを取ることで、子ども達が集まりやすくなり、それに両親も続き店頭PRに興味を抱く、という流れが形成されるようになりました。まさに、お茶くんがいたからこそ成立した“ニューノーマル”におけるティーテイスターの新たなあり方といえるでしょう。„”

店頭だけでなく、小学校などの教育現場での食育活動においても、お茶くんのアバターは大活躍です。もともとはティーテイスターが現地に赴いたのを、先ほどと同様の手法で、画面越しのお茶くんを通してコミュニケーションを取ります。小学生や教師の方々にも「お茶く~~~ん!」と歓声をもらい、時にイベントの進行が難しくなってしまうほどの盛況ぶりです。

(※2)伊藤園の社内資格制度。1~3級まであり、試験では、学科、検茶、口述が行われ、茶文化からおいしいお茶のいれ方など幅広い知識と技能が求められます。

 

“王位”、お茶。将棋とのコラボ


お茶くんは今年行われた「特別協賛 第62回王位戦」にも登場しています。

将棋の有名なタイトル戦の一つである王位戦の“王位”と、「お~いお茶」の“お~い”をかけているのは言うまでもありません。さらに、特別企画として「お~い」の文字が「王位」に変更されている「お~いお茶」をプレゼントしており、将棋ファンから好意的な反応が寄せられました。

このようなコラボは「お茶」に関連する要素が関係しており、将棋とのコラボは日本文化という類似点があります。また、お茶との食べ合わせもコラボをする基準の一つ。例えば、亀田製菓のハッピーターン、ほっともっとのカレーとのコラボが挙げられます。

その他にも、コラボは先述したお茶の「健康性」という観点からも行われています。

お茶の健康性はメーカーとしては伝えづらいという課題があります。そこでコロナ禍でマスク、除菌スプレーが注目されたことを受けて、抗菌効果があるカテキン成分の加工を施した「カテキンマスク」や除菌スプレーをパッケージにまとめて、賞品としてお客様にプレゼントするキャンペーンを行い、大きな反響を呼びました。

 

日常性を大切に。お茶を飲む新たなシーンを開拓


伊藤園が大切にしている言葉が「日常性」。伊藤園は1966年の設立から約55年、「お~いお茶」の販売開始から30年以上の歴史を持ちます。老舗の多い飲料業界の中では比較的新しい会社です。

企業の歴史やお茶の高級感を武器にせず、「お客様は今どんなお茶が飲みたいのか? 日常のどんな時にお茶を飲むシーンがあるのか?」という目線から価値を問い続ける。それが「お~いお茶」というブランドであり、同社が起こしてきた革新がそれを物語ります。ここでキーワードになるのが、「日常性」や「親近感」です。

屋内で飲むことが中心であったお茶を、世界で初めての缶入りを開発。外出先などの屋外でも気軽にお茶を飲むという、新たな常識を打ち立てました。さらに、缶だと蓋がないので飲み切らないといけないという問題を改善するために、1990年3月にペットボトルも発売してきました。お茶の「世界初のシーン」を切り拓き、お茶を通して新しい「飲むシーン」を作ってきた会社、それが伊藤園です。

このように、「日常性」とは決して既存の常識に捉われることはなく、お客様の生活のなかで潜在化されているニーズを見出し、新たな価値やシーンを創造していくことです。これが伊藤園、そしてお~いお茶が確固たるブランドを築いた所以です。

伊藤園お茶歴代

左:世界初の「缶入りウーロン茶」
中央:「ペットボトル入り緑茶飲料(500ml)1996年11月発売」
右:世界初の「ペットボトル入り緑茶飲料(1.5L)1990年3月発売」 ©伊藤園

お茶くんというマスコットキャラクターにおいても「日常性」を体現しながら情報を発信している存在です。

日常の様々なシーンで飲まれる「お~いお茶」について、お茶くんは「味の秘密」をこっそり教えてくれました。

「実はね~、缶、ペットボトル、容器によって味がちょっと違うんだよ! それぞれに飲まれる用途や状況を想定して、お客様が開けて飲んだ瞬間に一番おいしく感じるようにしているですよ。
例えば、紙パックは弁当と一緒が多いから、ご飯やお食事に合うようにちょっとだけ味を変えています。缶とペットボトルもちょっと変えててね、大きいとゴクゴク1日でもおいしく飲めるような味わいに、小さいものはゴクッと短時間で飲み切るおいしさにしてるんですよ! これ、秘密ですからね!!」

「日常性」を追求するため、「お~いお茶」という商品一つをとっても、お客様のニーズへの感度を上げて、お客様が飲むシーンに応じて香りや味づくりに細部にまでこだわっていることが分かります。

 

みんなの“お茶くん”になりたい!


お茶くんはデビューして約3年が経ち、社内外問わずにその存在は少しずつですが浸透しています。お茶くんが登場してから、伊藤園の営業の方が「お茶くんの人形を販促ツールとして店頭に置いて使いたい」と言われたことがあります。

実際に売り場に置くと、欲しがるお客様もいるぐらい人気で、お茶くんを置いておくだけでも、売り場の雰囲気がガラッと変わります。お茶くんは、今後のどのような存在を目指しているのでしょうか?

「最終的には『お~いお茶』を見た時に、頭の片隅に僕の顔がふっと浮かんで、お茶といえば、『お~いお茶だよね』と選んでもらうこと。僕の顔を思い浮かべることで、お~いお茶という商品の『鮮度へのこだわり』を思い出してもらいたいですね~。
あと、僕は伊藤園のマスコットキャラクターだけど、愛着を持ってくれている人にとって、“みんなのお茶くん”になれたら嬉しいな」

一方で、お茶くんが抱える課題についても投げかけました。10~30代の「お~いお茶」のブランド認知率は90%以上ですが、取材時点でのお茶くんの認知率は残念ながら13.9%(※3)。その点を含め、今後はどのような計画を考えているでしょうか?

「う~ん…、認知率よりももっと多くのフォロワーさんとつながりたいです。今はコロナ禍ということも考慮しながら、どうやってコミュニケーションを取っていくのがベストか考えています!
Twitterで行った『#茶畑エクスプレス』『#真夏の火入れ大作戦』はこれまでやったことのない全く新しいチャレンジだったので、これからも新しい企画にどんどん挑戦し続けます! とはいっても、今回の企画は頑張ったから、認知率がどれくらい上がるかちょっと気にしていますけどね…」

(※3)出典:TesTee Lab.「商品別市場調査第1弾!「お~いお茶」についての市場調査」

 

≪後日談≫お茶くんの認知度調査の結果がついに…!


取材後の2021年9月。お茶くんが気にしていた認知度調査の最新版が発表されました。

結果は…!!

お茶くんよ…、大丈夫か? 立つんだ、お茶くん! 皆さんも、お茶くんの応援をぜひよろしくお願いします。

 

【友達の輪バトン】次は“ターン王子”


次回は、お茶くんとコラボしたことがある「亀田製菓 ターン王子」にバトンをつなぎます。

お茶との食べ合わせが抜群とのことです。どうぞお楽しみに!

お茶くんの友達バトン

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記事:キャラクター事業部 野村隆仁

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